あらためて各ポジションでの『ふつう農業』のメリットを説明します。

 

 量販店さんについては『競合店に無い売り場』『顧客の囲い込みになる売り場』を提供できることが一番のメリットです。 『季節感のある野菜』を『一定期間継続して』『生産者の顔が見えて』『親しみの持てる地元産で』『鮮度がよく』しかも『単価が安く』販売する、『売り場のPOPやムービーなどの販促物も全部おまかせ』、これだけ揃えば競合店とのアドバンテージはかなり大きいと思います。

 

 特に『ふつう農業』でポイントとなる特色を数点あげます。『一定期間継続して』は市場仕入れの場合はその日その日の野菜は全国の市場から仕入れるわけですから同じ産地の野菜が継続して売り場に並ぶわけではありません。しかし『ふつう農業』の場合はだいたいどの作目も100日をめどに時期をずらして栽培しているのでおよそ100日間継続して売り場に並びます。

 お客様にその野菜のその生産者のファンになっていただく、それはそのお店のファンになっていただくことになります。いつもの生産者の野菜を食べ終わったらその生産者の野菜を毎日販売しているいつものお店に行く。鏡野町のトマト生産者 小原さんのミニトマトはイオンモール岡山様のイオンスタイルで毎日100パックづつ売れています。

※小原さんの動画

お客様がまず食べ終わった小原さんのミニトマトを購入するために競合店ではなくそのお店に足を向ける。量販店さんにとってそのことがいかに価値あることか。

 

 次に『鮮度良く』は地元岡山県内産だから当たり前なのですが、当日集荷した野菜は翌日もしくは翌々日に店頭に並びます。そして野菜は数量・期間を計画的に生産しているので売れ残りがおこりにくく、結果として鮮度の良い野菜が店頭に並ぶことになります。

 また移動距離が短いということはその間の輸送コストの削減につながり、店頭価格を押し下げることに繋がります。サプライチェーンが短く移動距離が短いことは、すべてにおいて有利にはたらきます。

 

 『売り場のPOPやムービーなどの販促物も全部おまかせ』は『野菜を売る』ではなく『売り場を売る』ふつう農業にとってもっとも重要なポイントです。結局これもサプライチェーンと移動距離(各プレイヤー間の距離)の短さに繋がることになるのですが、私たち『ふつう農業』は量販店さんのお店に行って農産マネージャーから直接要望を聞き、必要なもの(写真・ムービー・ストーリー・農産物そのもの)を圃場で取り込み、私たちが自前で加工して迅速にかつ継続して成果物として店頭にフィードバックしています。

 このことが今までの市場流通でできるのか。農産マネージャーは本部バイヤーに販促物を依頼して、仕入れた市場から、もしくは直接産地に販促物の有無を聞き、なければ写真だけでも送ってもらい、デザイン会社に販促物に加工してもらう。

 これは販促物の統一性もとれないですし予算もかかる、もちろん時間もかかります。

 

 その点『ふつう農業』だと移動距離も短く間に入る人間も少ないので小回り効いて店頭の野菜をより詳しく、より魅力的に見せる販促物が簡単にできてしまう。そして現在のお客様の求める『豊かさ』『親近感』『ストーリー性』を持った競合店と差別化ができる売り場ができてしまいます。

 

 そして他にも地方の量販店さんではなく、全国規模の量販店さんに対するメリットがあります。昭和の40年頃までは、町の八百屋や魚屋そして駅前の商店街が主な野菜や魚の小売店でした。

そこで圧倒的なバイイングパワーを持つ全国規模のスーパーマーケットが出現。

 

 豊富な野菜や魚が今までよりもお安く買うことができるようになり、小規模な八百屋や魚屋を次々に淘汰していきました。ここで消費者の心をつかんだのは『価格』と『品揃え』です。

 現在ではどうか。『品揃え』は今ではどこでも豊富なのが当たり前。地方のドミナント型の量販店でも必要なアイテムは全て揃います。むしろ全国統一の品揃え、全国統一の価格の全国規模の量販店さんのほうが季節色も地域色も出しにくく、小回りがきいて地元の消費者の動向しか考えなくて良い地方のドミナント型量販店さんに季節色も地域色も負けていてお客様に飽きられつつあります。

 

 『価格』でも以前はまとまった量を買う代わりに価格を安く買えていたものが、今では全国規模で統一商品となるとある程度産地を抑えておかねばならず、またそんな大規模な産地は限られているため価格面でのメリットを出せない、スケールメリットどころかむしろスケールデメリットになってきているように感じます。今まで強味であった『規模』が、これだけ情報も物流も発達した現在ではむしろ『価格面』でも『品揃え』でもウイークポイントになってしまっているのではないでしょうか。

 ならば全国規模で統一の品揃え(の必要な物ももちろんありますが)のための全国統一の仕入れではなく、全国を県レベル程度の小ささに分けて、その地域に根ざしてその地域の生産者をグリップしている、そしてその地域の歴史や食文化をよく知り小回りの効く地域プロデューサー(ふつう農業)を地元の野菜や魚の仕入れに利用してはどうでしょうか。

 などなどが量販店さんにとっての『ふつう農業』のメリットです。

 

 では農家さんにとってはどのようなメリットがあるか。やはり私たちの農家さん向けスタートアップ資料を見ていただいたらわかるように、

※スタートアップ資料

『買い取り』で『価格が一定』で『袋詰めの必要なし』で『集荷に行く』ことがメリットだと思います。

 

 そして消化仕入れだと売れ残りのリスクがあるので1つの品種を大量に作るのではなく、多品種をバランスを取って生産する必要がありますが、『ふつう農業』だともともとまとまった店舗数の野菜を必要な量だけ農家さんに作ってもらっているので品種を絞って効率的に生産することが可能です。

 また生産量が確定すると単価も決まっているのでだいたいの年間の売上高が予測でき、将来的な事業計画を立てることができます。

 

 設備投資の計画も人員配置の計画も、すべて計画を基に農業に取り組める、それが農家さんにとっての『ふつう農業』のメリットです。